日本でも少しずつ利用している人が増えてきている”クリッカー”。とはいえまだ聞いたことがない人も多いのではないでしょうか。
上記写真のようなものが”クリッカー”と呼ばれる道具です。海外ではトレーナーの方の多くがこのようなタイプの道具を使っています。
この記事ではこの”クリッカー”の役割や目的、使い方を紹介していきます。また、今回もアメリカンケネルクラブのサイトを参考にしております。
今日の記事もぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
クリッカートレーニングに使う道具が”クリッカー”
クリッカートレーニングというのは、犬の良い行いを積極的に褒めるトレーニングの1つです。悪いことを叱るのではなく、良い行いを誉めることで理想的な振る舞いに近づけていくトレーニングとも言えます。
クリッカーの役割は、飼い主の指示した行動ができた際の正確な瞬間を犬に伝えるものです。クリックをするタイミングが重要で、クリックをした後には必ずご褒美を与えます。
犬は犬自身の欲求が満たされる行動や飼い主に褒められる行動を繰り返し行います。例えば、愛犬が前足をあげたことに対してご褒美を与えた場合。愛犬はご褒美をもらうという欲求を満たすために、また前足をあげるいう行動をするようになります。
そのためクリッカートレーニングでは飼い主が望む行動をしたら、必ず犬にご褒美を与えます。
愛犬が良い行動をとった際にクリッカーを使わずにおやつをあげたらダメ?
ではこのトレーニングにおける”クリッカー”の役割とはなんでしょうか?良い行いをしたらご褒美をあげるだけでしょ。なんでクリッカーがいるの?と思われるかもしれません。
クリッカーは犬の”良い行いを積極的に誉めるトレーニング”というのを効率的に行うための道具です。確かにクリッカーがなくともトレーニングはできます。ただあった方が新しいことを覚えやすいですし、犬とのコミュニケーションにも混乱が起き辛いです。
それではクリッカートレーニングが愛犬のしつけや、効果的なコミュニケーションにどのように役立つかをみていきましょう。
犬も人間も褒められたら嬉しいのは一緒
クリッカートレーニングは動物学習の研究に基づいたものです。ご褒美を与えられた行動は将来繰り返される可能性が高いとされています。”しつけ”というと、悪いことをしたら叱る、という言葉のイメージがなんとなくあるかもしれません。しかし、クリッカートレーニングでは犬の望ましくない行動には焦点を当てません。また愛犬が良い行動をすることが当然のことと考えることもしません。
つまり、犬が望ましい行動や理想的な振る舞いに焦点をあてます。してはいけないことを叱るのではなく、何をすべきかを犬に伝えることで、犬が選択する行動に想像以上の影響を与えることができます。
犬はクリッカーが鳴ればご褒美がもらえると認識する
もちろん、クリッカーはご褒美とセットにならなければ意味がありません。あくまでもクリックは、ご褒美が近づいていることを示すだけです。あえて”おやつ”ではなく”ご褒美”と書いているのはご褒美はおやつではなくとも良いからです。
おやつはほとんどの犬にとって最高のインセンティブかと思います。しかしご褒美は愛犬が好きなものであればなんでも使えます。なので、愛犬が食べるよりも遊びたい気分の時はおやつではなくロープなどいつも使っているおもちゃをあげてください。
繰り返しになりますが”クリッカー”を使う上で重要なことは、タイミングと一貫性です。クリックは正しい瞬間を犬に伝えるもので、クリックの後には必ずご褒美がなければいけません。
意外と見落としがちなしつけチャンスの1つは”お水をあげるとき”!ご飯の前に”おすわり”等させる方は多いと思います。新しいことを教えている方は是非お水をあげる前1-2分をトレーニング時間として使ってみてください。
クリッカーは犬に良い行いとは何かを伝える道具
犬の良い行いを積極的に褒めるトレーニングでは良い行動をした時にご褒美をあげます。飼い主にとっては何が良い行いというのは明確です。しかし犬にとってはどうでしょう?”クリッカー”がなければ犬にはどの行動が良い行動なのか混乱させてしまうかもしれません。
例えば、”伏せ”を教えるとします。床にお腹がついて”伏せ”の姿勢になったからご褒美が出ているということをどのように犬に理解させれば良いでしょうか?”伏せ”を正しく教えるためには、犬が立ち上がってご褒美を手にいれるのではダメです。”伏せ”の姿勢の間にご褒美が与えられなければいけません。そうでなければ、愛犬は立ち上がることや、飼い主のもとに向かうことでご褒美がもらえると認識してしまう可能性があるからです。
一瞬だけ伏せをしてすぐに起き上がってしまう犬のケースで考えてみます。伏せの時間が短いとご褒美をあげる時間がないかもしれません。飼い主から離れたところでトリックや芸を教える場合は?犬にジャンプを教える時、ジャンプをしたことに対してご褒美をあげる、と犬に伝えるにはどうすれば良いでしょうか?
ここでクリックの出番です。クリックはご褒美が与えられる瞬間を”マーク”し、ご褒美が実際に与えられるまでの時間をかせぎます。ご褒美がもらえるタイミングが、犬が良い行動をしてから時間があっても、あなたの犬はどの行動に対してご褒美が出ているのかを認識できるようになります。
クリッカーの代わりに褒め言葉で教えることはできる?
褒め言葉でどの行動が良い行動かを伝えることは、もちろんできます。できますが、クリッカーほど明確ではありません。冒頭でも触れた通り、クリッカーは犬の”良い行いを積極的に誉めるトレーニング”を効率的に行うための道具です。
あなたも普段から褒め言葉を使って犬とコミュニケーションをとっているかと思います。もちろん、愛犬とのコミュニケーションで褒め言葉はとても重要です。何か良い行いをした時はしっかりと褒めてあげてください。
しかし普段のコミュニケーションにおける褒め言葉と、ご褒美がもらえる時の褒め言葉を分けることはとても難しいです。100%不可能等は言いませんが、私は分けることはできません、
クリッカーを使うことで、普段のコミュニケーションでの誉める行為とご褒美がもらえる良い行為が混乱することを防ぐことができます。また、賢い犬にとってはクリッカーを使うことで新しいことに挑戦していると認識する子もいます。
トレーニングが大好きなのは犬にとっては遊んでいるだけ
クリッカーを使うことのメリットは、ご褒美がもらえる行動が明確になる、というだけではありません。クリッカーを使ったトレーニングを受けた犬は、トレーニング自体が大好きになることが多いです。こういった犬達はクリック音を聞くためにトレーニングを行い、頑張ってご褒美を貰おうとします。
犬の視点から考えると、クリッカートレーニングは”新しい行動を覚える”というある種のゲームになっているはずです。遊びながらトレーニングをしていると思えば、飼い主にとってもプレッシャーは減るかと思います。
クリックする瞬間を探すことは悪い行いを叱るのではなく、愛犬のとった良い選択に集中することです。クリッカートレーニングは犬とのコミュニケーションを円滑にし、愛犬との絆を築き、トレーニング楽しいものにするはずです。
最後にクリッカーを使った少し具体的なトレーニング方法をご紹介します。詳しい方法は各ページを参考にしてください。
前提としてクリッカーを使ったトレーニングをするには、まずは犬にクリックの意味から教える必要があります。これはとっても簡単。クリッカーを鳴らしてすぐにご褒美のおやつをあげる。これを10-20回繰り返すだけです。これで愛犬はクリックの後にご褒美がもらえると認識します。
具体例①おやつを使って犬を誘導するトレーニングでの使い方
1番ポピュラーなトレーニングはおやつを使って犬を誘導する方法です。”おすわり”や”ふせ”を教える時にこの方法で行うことが多いです。教えたい動きができた瞬間に”クリッカー”をクリック!先に述べたように、犬の行動からご褒美までの時間があると、何に対してのご褒美なのか犬が混乱してしまいます。
このトレーニングでのクリッカーの役割はクリックですぐに犬に良い行いができたことを伝えることが一つ。そしてご褒美をあげるまでの時間を稼ぐという役割もあります。
具体例②クリッカーだからこそなおせる犬の悪い癖
クリッカーならではの使い方として、犬が良い行いをした瞬間を”マーク”する時に使う方法があります。例えば犬が何かを要求しているときに、吠えるのではなく、”おすわり”や”ふせ”などの行動をしたときに”クリック”します。もちろん”クリック”の後にはおやつをあげてください。こうすることで良い行いを”マーク”し、今後犬が何かを要求するときに、飼い主にとって理想的な振る舞いをするようになっていきます。
他にも良い行いを”マーク”して教える例として、無駄吠えをなくすトレーニングにも有効です。以前うちの子も家の呼び鈴が鳴るとよく吠える子でした。こういった犬には吠えない、つまり何もしていないことに対して”クリック”してご褒美をあげるようにしてください。
おうちに来たお客さん、友人に飛びつく癖がある犬にもこの方法はおすすめしています。やることは基本的に同じです。来客があっても飛び付かなかったら”クリック”!何もしないことを”マーク”してご褒美をあげましょう。
・クリッカーは犬のしつけ、トレーニングを効率的に行うためのもの
・役割の1つは何が良い行いかを犬に伝えること
・もう1つの役割はご褒美がもらえるまでの時間を稼ぐこと
・クリッカーを使ったトレーニングは良い行いのみに焦点を当てる
・自発的に良い行動をしたら”クリック”で犬に行動を”マーク”する
クリッカーは500円前後から買える比較的安いもの。トレーニング用におやつをいくつか買うよりも、クリッカーを買って効率よくしつけをした方が経済的ですよ、といつも伝えています。
イメージとしてクリッカーを使うのはちゃんとしたトレーナーさんだけ、と思われがち。ですが海外では家庭犬のしつけで使われていても何も不思議ではありません。
これを機に、今までうまくいっていなかったしつけを、新しい教え方で再チャレンジしてみてください!
今日も最後までお読みいただきありがとうございます!ではっ。